隷属の華【十七】
眠りから覚めた時、まず目に映ったのは見知らぬ天井だった。「っ…」
少し身を捩っただけで、全身に痛みが走る。
足の方に、何か重いものが載っているような圧迫も感じた。
それでもなんとか、必死の思いで上半身を起こした。
「あ…っ?」
自分の足下で、死んだように体を預けて突っ伏している背中が飛び込んでくる。
顔は伏せていても、誰なのかはすぐに分かった。
「公達、殿」
気を失う前に最後に見たのは、紛れもなく彼だった。
背中に回された腕の温もり、自分を呼ぶ声。
夢でも幻でもいいと思いながら身を委ねたあの光景は、本物だったことをようやく悟る。
「…っ」
清潔な寝着を着せられていることに気付いた。
こんなまともな格好をさせてもらえるのは、一体いつ以来だろうか。
「荀彧様」
聞き覚えのある嫋やかな女性の声が耳に届いた。
そちらの方へと首を向ける。
「えっ…?」
一瞬、荀彧は戸惑った。
記憶の中のその人は、常に煌びやかな衣装を纏う舞姫。
今自分が目にしているのは、市井の女性たちと同じような平服を纏った、ひとりの女性。
「あ、あっ…」
それでも。その可憐な面差しが、紛れもなく彼女だと訴えてくる。
「貂蝉、殿…ですか?」
荀彧が名を呟くと、女性はにっこりと笑いかける。
初めて見た屈託のない笑顔は、正に花の如くと云ってよかった。
「あの、ここは…どこでしょうか?」
荀彧は恐る恐る訊ねた。
少なくとも長安の宮殿ではないことはわかる。それでも一抹の不安が過ぎった。
殺されるのを免れただけで、結局自分は、荀攸共々董卓の手の内なのではと。
「荀爽様の御邸宅とお伺いしています」
「叔父上の!?」
貂蝉からの思わぬ返事に、驚いて目を見開いた。
「はい。荀攸様がこちらまで案内してくださいました」
貂蝉の視線は、荀彧の足下で眠り続ける荀攸へと向けられる。
「この方も、苛烈な責め苦に耐えられたのでしょう。荀彧様を介抱なさった後、このまま眠られていました」
「っ、公達殿…っ!あ」
荀攸へと駆け寄りたい衝動に駆られながら、荀彧は手を伸ばそうとした。
しかしあちこちから鈍い痛みが走り抜け、動きを遮る。
ままならぬ体に震える荀彧の肩に、貂蝉はそっと掌を置いた。
「どうかご無理はなさらず。まずはご自身を労わることだけ、お考えください」
貂蝉は枕元に用意した椅子に腰かけ、荀彧の目の前に椀を差し出した。
「薬湯をお持ちしました。よろしければ」
「…すみません。いただきます」
椀を受け取り、ゆっくりと口をつける。
人肌に温められた薬湯は、優しく荀彧の喉を潤した。
「董卓殿は…どう、なったのです…?」
体中を血に塗れさせても尚迫り来る、羅刹の面相が脳裏に浮かんだ。
それまで穏やかに荀彧を見守り続けていた貂蝉の表情から、色が抜け落ちる。
「…死にました。奉先様…呂布様の手によって」
「え、っ…」
董卓が、死んだ。首を引き裂かれても執念の炎に燃えていた、あの男が。
俄かには信じられない事実だが、それ以上に呂布の名が出てきたことに驚かされた。
「呂布…ですか?」
二、三度垣間見た覚えこそあるが、後宮に囚われた後は見る機会もなかった。
それでも最強の武人であることくらい荀彧も知っている。董卓の義理の息子であるとも。
「では董卓殿は…息子に、斬られたと?」
荀彧の言葉に、貂蝉は深く頷いた。
「はい…その通りにございます。呂布様が止めを刺されました」
「そう、でしたか…」
自分自身、身を擲ってまで殺そうと思った男だ。同情心があるわけではない。
ただ、義理とはいえ、息子に刃を向けられて最期を迎えることになるとは。
秩序などないに等しい、荒廃し切った乱世の只中という現実を改めて突き付けられる。
そして。自ら混迷を起こしていた男も、乱世の生み出す暴威から逃れることはできないという無情も感じた。
「私たちが駆け付けた時、既に董卓様は手負いでした」
貂蝉はおもむろに懐から何かを取り出し、荀彧へと見せた。
「あ…」
紛れもなく、荀彧が身に着けていた髪紐だった。
元は青紫色だったそれは返り血に染まり、所々赤黒く変色していた。
その端には、董卓を血に染め上げた鋭利な飾りが、今もぶら下がっている。
「貴方の手にこれが握られていたのを見て、悟りました。荀彧様お一人で立ち向かわれたのですね」
「も…申し訳ありません。貴方の飾りを…二度も血に濡らしてしまって」
女性の大切な持ち物を血で穢した、その罪悪感が荀彧の表情を凍らせる。
しかし貂蝉は柔らかく微笑み、思いがけない台詞を口にした。
「お気になさらないでください。私も、そういう時のために身に着けていたものですから」
「え、っ…」
言葉に委ねられた意味の重さに、一瞬声が詰まる。
思わず、荀彧は貂蝉の顔を見つめた。
「貂蝉殿…では、あなたは…」
戸惑いながら発せられる問いの言葉を待たずに、貂蝉は頷いた。
「私は董卓様を暗殺するために送り込まれた、埋伏の毒でございます」
完璧なまでに整い、穏やかな笑みを湛えたその顔に、仄かな翳が差し込む。
「まずは董卓様の側女として。そして…その義理の息子である呂布様に取り入ることで、お二人の仲を裂き、そして呂布様の手で董卓様をお命をいただく。そのために、今まで動いておりました」
「……」
淡々と告げられる真実に、荀彧は黙って聞き入った。
「もう少し早く、成し遂げることができればよかったのですが…まさか董卓様が、虎牢関を捨て駒にするとまでは見定められず。長安へと逃がす時を与えてしまいました」
本来ならば虎牢関にて連合軍を退け、戻った後、事を起こす手筈だった。
呂布に勝手に連れ去られたと思い込ませ、不信感を十分に与えれば何らかの行動を起こすと見て。
そこを、呂布と共に討ち果たすつもりでいた。目論見は崩れ去ってしまったが。
「結果として、呂布様はご自身の武を貶められたと激怒し、今回の結果に繋がりましたが…そのために、荀彧様を更なる苦境に追い込みました。申し訳ありません」
いきなり頭を下げられて、荀彧は面食らった。
「っ、貂蝉殿。どうか…どうか顔をあげてください」
告げられた真実に一時驚きはしても、理解が及ばないということはなかった。
むしろ、今まで謎めいていた彼女の佇まいや眼差し、行動、その全てに納得がいった。
このか細い身の上でたった一人、董卓を討つべく暗躍していたのだ。
「貴方は…それだけの覚悟を秘めながら、今まで…っ…」
こみ上がってくる感謝と畏敬の念が、瞳の奥を熱くし、声を詰まらせる。
貂蝉は慈愛の籠った手つきで荀彧の背を撫でた。
「荀彧様にお会いするたび、私は…身が震える思いでした。董卓様を葬るより先に荀彧様が壊れてしまうのではないかと、気が気ではなくて」
暴力に等しいやり方で組み伏せられ続けてきた姿を、誰よりも間近で見てきた。
自分が知る董卓の本性など、ほんの僅かな側面に過ぎぬ。荀彧が無惨に引き裂かれていく様はそれを知らしめた。
国も、人も、このままでは何もかも荒廃していく。一刻も早く董卓は滅せなければならない。
その思いを胸に、今日まで歩んできた。
「よく、私たちが戻るまで生き抜いてくださいました。お救いできて、本当によかった…」
「貂蝉、殿…ありがとう、ございます…ありがとうございますっ…」
「荀彧様…っ」
豪奢な装飾に身を包んだ舞姫と、淫靡な衣装を纏わされた奴隷。
虚飾の美からようやく解放された二人を、朝日が優しく照らし出す。
「……」
荀彧と貂蝉が互いにすすり泣く声を、荀攸は黙って聞いていた。
少し前に意識は戻っていた。だが、起き上がろうとは思わなかった。
二人だからこそ共有できる感情の中に、自分の存在を混ぜ込みたくはなかった。
「…これは?」
帝の虚ろな眼差しが目の前の光景に注がれる。
「荀爽殿と何顒殿にございます」
王允は抑揚のない声で告げた。
「そうか」
帝もまた、抑揚のない声で返事をした。
真新しい盛り土を、暫しぼんやりと眺め続ける。
「荀爽も死んだのか」
「はい」
「………そう、なのか」
最後に見たのは、よろよろと寝所を出て行く枯れ木のように痩せ細った背中。
今ならわかる。あれは人が死を迎える直前の姿だったと。
荀彧を助けてくれと懇願した時の、この世の終わりを前にしたような顔が瞼の裏に浮かぶ。
「…すまなかった」
最後の最後に無理をさせてしまったことを、帝は絞り出すような声で以て詫びた。
昨晩、凄惨な光景を思い返して咽び泣いた子どもの姿はそこにない。
土の中に眠る故人を偲び、ただひっそりと、一筋の涙を流す。
その様を見届けた瞬間、王允は暫しの間目を伏せた。
「陛下。よくお聞きください」
王允の声にやはり抑揚はない。しかし先程までとは違うひりついた鋭さが宿った。
背中に注がれる声を、帝は俯きながら受け止める。
「貴方を、この国を慕う者は数多くいます。ですが悲しいことに、そうした者たちほど力を持たない。そして貴方を狙う不遜な輩は尽きませぬ。今はそういう状況です。また近いうちに火種は燻りましょう」
「わたしに…朕に力はないのか」
「畏れながら、ございません」
縋りつくような帝の言葉を、王允はきっぱりとした物言いで撥ねつけた。
それはこの幼帝にも教え込まれたであろうことが、現実には意味を成していないと突き出すに等しい。
帝は確かに、この国の頂。最も尊ばれる存在。
されど、無力である、と。
「…なら、朕はどうしたらいいのだ」
諦めの色を滲ませながら、帝は問いを重ねる。
「陛下…」
本来はまだ、十にも満たない少年である。
にも拘らず、何故、どうしてと喚くこともせず、臣下である自分の言葉を待っている。
間違いなく帝の資質を備えていると痛感させられ、奥歯が軋んだ。
治世であれば。いま少し年長であれば。
何故、今この乱世の只中で、彼の人はかくも幼く儚き少年なのか。行き場のない虚しさが渦を巻く。
それでも王允は、すべてを腹の内に収めて決然と言い放った。
「耐えてください。そして毅然としていてください。力はなくとも、貴方の背後には、人が容易に手出し出来ぬ、してはならぬだけの威があります。いずれ貴方と、この国を庇護し得るだけの者が必ずや現れましょう。それまでは何としても耐え抜いてください」
「……わかった」
帝はゆっくりと、王允の方を振り向く。互いの空虚な視線がかち合った。
その夜、王允の部屋を静かに訪う者がいた。
「お義父様」
密やかに現れた娘を黙って迎え入れ、椅子に腰掛けさせる。
卓越しに向かい合ったところで、王允は口を開いた。
「荀攸殿と荀彧殿は、どうしておられる」
「今はお二人とも、落ち着いて過ごしていらっしゃいます」
「そう、か……」
王允はようやく、安堵した表情を見せた。
思う以上に眉を顰め続けていたのか、眉間が酷く痛むことに今更気づかされる。
「陛下のご様子は…いかがなのでしょうか?」
しかし貂蝉の問いに、再び王允の目つきは険しくなった。力なく首を振りながら答える。
「完全に心が死んでいる…無理もない、私では陛下をお救いすることはできぬ」
「…お義父様、畏れながら」
貂蝉は、王允が目に見えてやつれているのを感じ取っていた。
洛陽で再会できた時には既に気づいていたが、状況が状況だけに言うのを憚られていた。
心労が深く重なっていることを察し、努めて穏やかに申し出る。
「もう、お一人で無理をなさることはないのではありませんか?荀攸様や荀彧様が快方に向かわれ、宮中に復帰すればきっと…」
「いらぬ」
荒げたわけでも怒鳴り散らしたわけでもない。
しかしそれはあまりにも、明確なる拒絶の声だった。
「お義父様…?」
貂蝉の形の良い瞳が、戸惑いに揺れる。そこに異様な目つきをした義父が映り込んだ。
「私ひとりで、十分だ。十分なのだ」
薬湯を飲んだ後再び寝入ってから、荀彧は一度も起き上がることなく夜を迎えていた。
それだけ、彼の体は疲弊を極めている。せめてもの救いは、昨晩のように熱に浮かされ乱れる様子が見られないことだ。
昏々と眠る荀彧の枕元で、荀攸は静かに彼を眺め続けた。
『荀攸様…私などにお気を遣わずとも、よろしかったですのに』
結局、荀攸が体を起こしたのは、荀彧がもう一度眠った後だった。
貂蝉は狸寝入りに気づいていたようで、起き上がった荀攸を見るなり申し訳なさそうな顔をする。
『まだ、荀彧様とは満足に言葉を交わせていらっしゃらないのでは』
『よいのです。俺などより、貴方の方が…文若殿の支えになります』
『そんなことは…』
頑なに己を卑下する荀攸を見て、貂蝉は眉を曇らせた。
恩人の女性まで困らせて、どれだけ情けないのか。かといって気の利いた言葉が出てくるわけでもなく。
それでも、少しばかり状況が落ち着いた今ならばと、荀攸は貂蝉に向き直る。
『その…文若殿の身も心もお救い頂き、ありがとうございます。貴方にはどれだけ感謝しても足りません』
ようやく、感謝の言葉を口にできた。
貂蝉の献身的な振る舞い、そして荀彧があれ程までに心許す姿。
誰の救いも求められない状況下でただひとり、貂蝉だけが荀彧にとってのよすがだったのだろう。
『ですが何故…文若殿にここまでしてくださるのですか?』
二人のやりとりからは、男女の仲のようなものは感じられなかった。あくまで苦界に堕とされたが故の哀しい繋がりに見えた。
しかし、董卓を暗殺するために自身を売れるほど強かな女性が、後宮で会っただけの荀彧をどうしてここまで気にかけてくれたのか。
『…すみません、突然』
表面的な言葉だけを取れば、野暮な発言だ。それでも聞かずにいられなかった。
『…荀彧様はご自身が耐え難い苦境にあっても、常に国のことを憂いていらっしゃいました。戦が始まるとお伝えしたときの、無念の表情は忘れられません』
貂蝉は、眠る荀彧の前髪をそっと直しながら言った。
『そのお姿は、あまりにもおいたわしくて…父と重なって見えました』
『父……王允殿、ですか?』
確認するように訊ねると、貂蝉は頷きつつ苦笑を浮かべた。
『荀彧様と我が父が似ているということではありません。ですが…この爛れゆく国に心痛める面差しは、まったく同じでした。これほどまでに国を想える方は、必ずやお救いしなければいけない…そう思ったのです』
そこまで語り終えたところで、貂蝉は恭しく頭を下げる。
『今宵、私は席を外します。お二人でごゆっくりお休みください』
言葉の通り、夜が更けても貂蝉が戻ってくる様子はなかった。
推測に過ぎないが、恐らくは宮殿へ行ったのだろう。父が待つ場所へ。
それにしても、なんと器の大きく、強固な意志の女性だろうか。
「っ…」
彼女がいてくれなかったら荀彧はおろか、自分も無事ではなかったのだと思うだけで寒気がした。
もし、あの場に呂布が現れなかったら。その傍らに貂蝉がいなかったら。共に血祭りに挙げられてすべて終わっていたかもしれない。
考えれば考えるほど、貂蝉に救われたという感謝の念が募り、自分への情けなさと後悔が膨れ上がる。
碌な言葉も交わせないまま、大切な叔父を自ら手放す真似をし。彼が陥れられたことにも気づかないで無明の日々を過ごした。
殺される寸前だった荀彧の傍に駆けつけることはできた。だがあれとて、荀彧が必死で董卓に抗い、帝が想いを繋いでくれたが故に成せたまでだ。助けられたのは、むしろ自分の方。
そして気を失い苦しんでいることを言い訳に、ついにこの手で、彼を汚した。
「……文若殿」
今宵の月明かりは特に強い。空には、煌々と輝く真円が浮かんでいる。
白銀の光に照らし出された荀彧の顔は青白く、ふとした瞬間死んでいるようにも見えてしまう。
「文若、殿っ…」
うわ言のように名を呟きながら、荀攸は荀彧の頬に手を添えた。
あまりにも白く映る見た目に反して、その肌からは柔らかな温もりが伝わる。
規則正しく上下する胸と小さな寝息が、彼が生きていると教えてくれる。
「綺麗です」
自然と、口はその言葉を紡いでいた。
いつかの日が脳裏に鮮やかに蘇ってくる。もう既にあの時、実感を伴って自分は彼を見ていたのだ。
同族であるとか、男同士であるとか、六歳も年下の相手になんという浅ましさだと咄嗟に己の心を戒め、表に出すまいとした感情。
時を戻せるのならば。初めて公達と呼んでくれたあの夜の彼を抱き寄せて、すべてを奪ってしまいたかった。まだ何も知らない、穢れの中に堕とされていない、無垢な彼を。
「っ!!」
瞬時に背筋が寒くなり、頬に添えていた手を剥がした。
思い上がりだ。愛し愛される喜び、体を重ねる悦びを教えることなど、自分にできよう筈もない。
親兄弟、親族たちからの深い愛情と薫陶を一身に受けて育った彼は、酷く苦しんだだろう。同族で、男同士で、と。
所詮自分では、この想いを納得いく形で導くことなどできぬ。不用意に彼を傷つけるだけ。
ならば、せめて。共に国に仕え、彼がその才で以て一層輝く様を見守り支えていくことが自分にできる最善の道だった。それすらも成せなかった。
こんな自分に、触れる資格など。彼の傍らにいる資格など。
「ん…っ」
荀彧の眉が寄せられ、小さな吐息が聞こえた。
ややあって、ゆっくりと瞼が開かれる。
「………あ」
ぼんやりとした眼差しが少しずつ透き通り。瞳の中に、輪郭が映し出される。
「公達、どの……?」
荀彧はか細く震えながら、目の前で憔悴する甥へと手を伸ばした。
「っ…文若、殿…」
たった今自覚した筈なのに。彼に触れる資格などありはしないというのに。
「やっと…お逢い、できました……」
眦から絹糸のような涙を伝わせながら、荀彧が微笑む。
今にも崩れ落ちそうな、ほっそりとした指先。それが、自分へと向かっている。
触れてはいけない。それでも今、彼を振り払うことが果たして正しいのか。
―――月よ、赦せ。今一度だけでいい。
今この時は、せめて今この時だけは。彼が望み縋ろうとしている荀公達でありたい。
「…はい。文若殿」
荀攸はようやくその手を取り、柔らかく握り締めた。
2018/10/25